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2021.7.3

 それは──そうだね。私は頷き、自転車は短い橋を渡る。この上流が目指す滝のはずだった。そのことを伝えると、彼女は、まだまだ遠いなあ!と笑った。

 コンビニみたいな休憩できる場所もなく、信号は見渡すかぎり車の影も見えない交差点ばかりで、私たちはほとんど止まることなく上りつづけた。滝までの距離の標識が五百メートルずつ減っていく。坂はしだいに急になり、ゆるやかになったと思ったら十軒ちょっとの集落をはさんですぐまた急になり、私たちはもうほとんど口もきかない。あと五百メートルの標識のある集落を過ぎると、歩道が消えて、細いくせにガードレールはしっかり設置された、いかにも峠越えらしい道に変わった。

 もうすぐだよ、たぶん。

 もーすぐ限界。恋人は、ちょっと雑な感じで言葉を投げだす、エリカみたいな口調で返してきた。


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