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2021.6.8

君島さんは、あの日のことを思い出すとき、私の、原稿では消えてたからそのまま忘れそうだったのにゲラで復活した発言を、思い出すだろうか。

 あの発言をしたとき、そして原稿に書き足したとき私は、君島さんの気負いがやわらげば、と気を遣ったつもりだったが、しかしそれは私の勝手な考えで、きっと君島さんにとっては余計なお世話なのだろう。というかそもそも、私が何を言おうと気にしないだろうか、いや気にしないならジャージなんて着てこないか、でもほんとうにただ部活のあと着替えるのが面倒なだけだったのかもしれない、と考えがうろついたあげく道に迷い、いやなんでおれは三ヶ月以上前の他人の服装のことをいつまでも考えとるんだ、君島さんが何を着ようと知ったことか、とだんだん雑な感じに流れ出したところで、不意に隣室でベランダのドアが開き、閉まった。


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