それなりに集中して書き進める。ふと胃のなかから七草リゾットのチーズのにおいが湧き上がってきた。あれは美味かった、と思う時間が惜しくて、冷めたコーヒーを流し込んでにおいを押し返す。食べたばかりの美味いもののことを考えるのは人生の至福のひとつだが、私のそんな感情は読者にとってはどうでもいいことだ。昨日振り込まれていたうちのひとつが、今月売りの文芸誌に掲載された座談会の原稿料──名目は口述料──で、その座談会で君島さんが、似たようなことを言っていた。
ぼくがさっきまで部活に出てた、生徒を走らせたり跳ばせたり筋トレさせたりしてた、だからいまこうやってジャージを着てる、なんてのは、ぜんぜん本質的なことじゃないんです。
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