ファミマに入り、それぞれの飲みもの(恋人は常温のクリスタルガイザー、私は冷えた伊右衛門)を手に取った。
あ、カオルくん、わたしが出すよ。おとといのとき出してくれたし。
ほんと? ありがと。二日前の散歩のときは、たしか私が、喉かわいた、と言ってぐんぐんグルトを買い、恋人はそれを二、三口飲んだだけだったが、押し問答をするのもお互い億劫だから素直に渡した。
あと何かある?
それだけでいいよ、買っても鞄ない、し、と尻すぼみになったのは、伊右衛門を入れる鞄もないと気づいたからだ。尻ポケットはスマホと財布で埋まっているし、横のポケットには入らない。むりやりどこかにねじ込んでも、薄くした財布でさえ異物感がすごいのに、五百ミリのペットボトルなんて入れた日には、心すこやかにそぞろ歩けない。やっぱお茶もいいや。
べつにいいよ、百円ちょっとなんだから。遠慮していると思ったのだろう、不毛なやりとりを予感して声がざらついている。
持って歩くの面倒だから。喉かわいたらそのとき買う。
そう、わかった。納得したのか表情をやわらげて、伊右衛門を差し出してくる。わたしのも飲んでいいからね。ほしいとき言ってね。
ありがと。
じゃレジしてきます。そう言いながら、ちょっと遠回りになるお菓子コーナーに向かう。ラムネの小袋を取って、チョコの前で立ち止まる。なんか真剣な目つきで吟味しはじめた。
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