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2021年10月15日
2021.4.16
クラブワールドカップには大陸選手権で優勝しなければ出場できないし、大陸選手権──アジアならACLに日本から出場するにはJ1リーグで上位に入賞するか天皇杯で優勝しなければならない。J1には厳しい審査を経てライセンスを交付されたチームしか所属できないが、天皇杯には、プロクラブは...
2021年10月13日
2021.4.15
ほかに目ぼしいニュースはなく、あまり興味のないもの──ガイナーレではないJ3のクラブの選手の結婚、リーグ・アンの下位チームの監督解任、元ガボン代表のサイドバックの現役引退──にまで目を通してしまう。 世界三十万を超えるクラブチームの頂点を決める戦い、と、クラブワールドカップ...
2021年10月12日
2021.4.14
座談会の確認にどのくらい集中していたのか、体感的にはけっこう時間が経っているような気がするが、恋人から連絡はない。なんだか落ちつかず、スマホのニュースアプリを見ながら待つ。まだ日本は朝の早い時間で、あまり新しいニュースは出ていないが、ヨーロッパのいくつかのリーグのスコア速報...
2021年10月11日
2021.4.13
いやもう、われわれ編集部一同も心より安堵しております。 ほっ、とため息を吐くペンギンのスタンプが頭に浮かぶが、もちろんメールにスタンプが表示されているわけではないし、私がそのペンギンを見るのは恋人とのLINEだけだ。私は、ぜんぜん関係ないのに恋人と、恋人がZOOMの画面をこ...
2021年10月10日
2021.4.12
送ると同時に、スマホの画面の上端に、メールが届いたことを示すバナーが現れた。座談会最終確認です、との件名で、PDFが添付されていた。二月末に行った座談会を、三月に原稿の手直しをして、その後ゲラのチェックを経て、ようやく来月売りの文芸誌に載る。読みかえすのはもう四、五度目くら...
2021年10月9日
2021.4.11
今日、夕方ミーティングなのに。 何時だっけ。 六時半。ずらせるかな……。 まあ酒の席での思いつきみたいだから、無理に出なくても。 無理に出るでしょ。ひさしぶりなのに。 ほんの五秒ほどで返ってきたその言葉に、私はうれしくなった。最後にみんなで集まってから五年以上経ったいまも、...
2021年10月8日
2021.4.10
恋人にLINEを打つ。 ルールーから電話、みんなでこっち来て散歩しようってさ。ウキウキしてる小猿のスタンプを添えて送る。しかし返事は、まじか、という三文字だった。
2021年10月7日
2021.4.9
共同でアトリエを借りて制作をしているエリカとリンをふくめて、私たちのうち八人が自営業や自由業をやっていて、平日とかの暦にもとづいた生活をしているのは私の恋人だけだ。彼女にしても、世界のあちこちの時間に合わせてやりとりをしていて、いくつもの時間軸で生きているふしがあり、私たち...
2021年10月6日
2021.4.8
迷っているうちにルールーが言葉を継いでくる。平日だし、会社員は難しいかな。 どうだろう。けっこう自分の裁量で働けるみたいだし……。訊いてみるね。 うん、どっちにしろわたしたちはたいへん眠いですので、なんか起きるまでにLINEでお返事しといてもらえれば。 わかった。おやすみ。...
2021年10月6日
2021.4.7
きみとみやびはどう、いけそう? ぼくは大丈夫。でも、とつづけようとしてふと迷う。恋人は、夜だったか、ヨーロッパかどこかの人とミーティングをすると言っていた。ルールーたちが寝て起きて、みんなでこちらまで来てから散歩、なら、ミーティングの時間に引っかかるのは間違いない。だから彼...
2021年10月4日
2021.4.6
私たちが〈みんな〉と言うとき示しているのは、私と私の恋人、ルールー、宇野原さん、ベラさん、ミツカくんと林原さん、そしてエリカとリンの総勢九人で、私たちはよくこの大所帯で行動していた。ビアガーデン、江ノ島や雑司が谷霊園、休日の散歩。九人でぞろぞろと動き、だいたいは他愛もない、...
2021年10月3日
2021.4.5
ルールーはそれから、そうはいっても徹夜して眠いし、宇野原さんちでそのまま寝て、起きたらみんなでそっち行くね、とつづけた。 みんな? みんな。
2021年10月3日
2021.4.4
今朝の電話のときや、直後のベラさんからのLINEでも、そこにルールーがいるとはわからなかった。数時間前に想像した、宇野原さんたちの家の居間の様子──酔っぱらい三人がしまいそびれたニトリの炬燵の三辺に足をつっこんでげらげら笑っている──を修正する。もうひとつの辺に、ひとりだけ...
2021年10月2日
2021.4.3
で、久保野くんは終電で帰ったからわたしもお役御免、だったんだけど、なんかベラちゃんとだらだら話してて、いま宇野原さんが起きて、なんでカオルおらへんねや!ってわめいたから電話した。迷惑だった? まだ寝てたかな。 いや、もうふた仕事やっつけたところ。...
2021年10月1日
2021.4.2
ハロー、元気? えっと、その声は……ルールー? ルールーだね。ルールーはからからと笑った。挨拶だけでわたしってわかるとは思わなかった。 ルールーはそう言った。宇野原さんのスマホから私に電話をかけようとする女性なんてベラさんかルールーくらいのものだ。そしてベラさんは、今朝の時...
2021年9月30日
2021.4.1
テキストファイルを立ち上げ、朝に書いたものを読み返す。修正はほとんどなく、安堵して書き出そうとしたところで、尻と椅子の間でスマホが震える。座ったまま引っぱり出してみると、また宇野原さんからの電話だった。 また、といっても、きっとあのあとすぐ寝た宇野原さんにしてみればもう明日...
2021年9月28日
2021.3.31
座談会のゲラはもう送り返したのだし、べつに原稿と突き合わせて読む必要なんてなく、暇つぶしのつもりで読みはじめたのだが、これはけっこう楽しいな。最後まで読み切ってファイルを閉じると、いま書いている中篇の約束をしていた編集者から、謝罪メールへの返事が来ていた。掲載予定が決まって...
2021年9月27日
2021.3.30
パソコンのスリープを解除すると、座談会のゲラが届いていた。この間作業したのは文字起こしを構成の鎌部さんが整えた原稿で、もちろんすべて私たちが自分の口から発した言葉ではあるのだが、発言をまとめるときに、それぞれの意図とずれた観点で要約されたり言い換えられたりすることもある。だ...
2021年9月26日
2021.3.29
私は恋人とのやりとりでしか、この、もう流行遅れで、誰も憶えていないようなスタンプをつかわないし、きっと彼女もそれは同じだ。でも私たちの間では、このペンギンはいつまでも感情を運びつづける。壁ごしのWE WILL ROCK YOUとか、玄関に置き去りにされた袋とか、このペンギン...
2021年9月25日
2021.3.28
色の出た茶をカップに注ぐ。すこし濃く、渋みのある味になっていた。一口、二口飲み、ケトルに残っていたお湯をさし、部屋に戻った。恋人にLINEで、〈お茶いれたからご自由に、やや濃いですが〉と送ると、すぐに返事が来た。土下座するペンギンの下に、ありがと候、という手書き文字のくっつ...
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